塗装工事業とは
塗装の役割について
塗装とはその文字の通り、装に塗るということで、材料の表面を塗料で覆うことをいいます。「塗料で覆う」と考えると、塗料によって物を作るだけと思ってしまうかもしれません。しかしながら塗装には多くの役割があります。
例えば建物の外装に対して行う場合は、防錆や防腐、防蟻など対象物の品質維持の役割に大きく貢献します。もちろん装飾的な要素も担っています。そのような観点では、塗装工事に従事する職人さんは、塗装工、塗装屋、塗装職人と呼ばれます。
一方でペンキ屋や看板屋という呼称で呼ばれることもありますが、前述の通り、塗装におけるどのあたりの役割を担って要いるかで一定の区別をつけていくことは必要です。ちなみにペンキとはペイント(またはオイルペイント)とも呼ばれ、油性塗料の一種です。一般的に塗料については、水性塗料と油性塗料に区分され、塗料の成分が水なのかシンナーなどの有機溶剤なのかで決まります。水性塗料が価格が安く臭いが少ないものの、耐摩耗性が劣るのに対し、油性塗料は価格が高く臭いはきついですが、耐久性や水に強いなどそれぞれ長所と短所があります。水彩画と油絵のように、用途によって塗料は使い分けられています。
塗装工事業について
塗装工事にどんなものが含まれるかは、国土交通省が建設業許可事務ガイドラインで例示しています。
例示しているのは、「塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面表示工事」の6つです。
例示された工事の中でこれは何?と思うのが、溶射工事とライニング工事ではないでしょうか。溶射工事は金属などを溶かして対象物に吹き付けて覆う工事となります。金属などを溶かす際の熱源によって、プラズマ溶射やアーク溶射、ガスフレーム溶射などいくつかの種類があります。ライニング工事は対象物の表面または内側を覆う工事となります。対象物を被覆する材料が、塩化ビニルなどのFRPなのか、金属なのか、ゴムシートなのかでいくつか区分されます。被覆材料に金属を使う場合、溶射工事となる場合もあるため、厳密にはライニング工事は溶射工事を包含しているとも言えます。このあたりが例示の難しいところですね。
一方で対象物の「内部を覆う」というところがキモでもあり、タンクなどは内部の被覆が耐久性に大きく寄与することになります。
塗装工事業の建設業許可を取得するには?
塗装工事業は建設業法で定める建設業許可29業種のうちの一つです。建設業許可取得のためには、業種によって異なる要件として専任技術者要件が唯一挙げられます。塗装工事業における専任技術者認定についても、資格と実務経験の2種類の認定方法があります。
ここでは資格について説明したいと思います。建設業法が定める国家資格では、1級と2級の土木施工管理技士(2級の場合は鋼構造物塗装)、1級と2級の建築施工管理技士(2級の場合は仕上げ)の4つが対象となります。施工管理技士については土木でも建築でも要件を満たすというのがキモですね。
また職業能力開発促進法の技能検定においては、塗装・木工塗装・木工塗装工、建築塗装・建築塗装工、金属塗装・金属塗装工、噴霧塗装、路面標示施工の5種類が該当します。なお特定建設業における専任技術者になれるのは、実務経験を考慮しない場合はいずれも1級の土木施工管理技士と建築施工管理技士のみです。
塗装工事業者のスキルアップについて
塗装工事については、一般社団法人日本塗装工業会が登録建設塗装機関技能者や耐火塗装施工技術資格などの認定を行なっています。これらは一定の実務経験や技術士資格を保有している塗装工が、さらに講習などのカリキュラムを受けスキルを認定される制度です。
最初に述べた通り塗装工については、ともするとペンキ屋や看板屋など、塗装における一機能だけに焦点を置かれた呼称で呼ばれることも少なくありません。本来の塗装の意義をさらに浸透させていくためにも、塗装工のスキルアップやそれを支援する協会の活動は、建物の経年が進む今後ますます重要になってくるでしょう。
(参考)
国土交通省 http://www.mlit.go.jp/
一般社団法人日本塗装工業会 http://www.nittoso.or.jp/