墨出しで重要な「間違えないこと」を、徹底的に追求する|株式会社中村測量 中村也寸志代表
トータルステーションを使った墨出しが得意
−−事業内容を教えていただけますか?
墨出し工事全般をおこなっています。小型や中型のマンション、老人ホームなどの施設など、戸建てではないものを取り扱うことが多いです。
細かな作業ですが、建設業においてかなり重要な仕事だと思っています。
−−御社の墨出し工事は、具体的にどのようにおこなっていますか?
トータルステーションという測量機器を使用しています。光波測距儀とトランシットを組み合わせたような機械です。
トータルステーションを使用する理由としては“精度がいいから採用している”というのが一番の理由です。今までは職人さんの感覚で墨出しをしていたのですが、トータルステーションを使うと1㎜の精度で誰がやっても同じように測れます。人や機械による誤差が少ないのはメリットですね。
−−トータルステーションを使っている業者様は珍しいのでしょうか?
使ってはいるのですが、距離を図る機能だけ使っている業者さんがほとんどですね。
というのも扱いがむずかしくて、座標を理解していないと、光波の距離と角度の両方は測れないんです。X軸・Y軸という、昔学校で習った座標計算が必要でして。このハードルの高さが、トータルステーションを活用しきれない人が多い原因かもしれません。
−−扱いはむずかしいものの、精度は高く仕事できるんですね。
さまざまな角度から、ちょっとした隙間にも墨出しできるようになります。人や場所、機械による誤差がないのは、元請さんにとっても安心いただけるのではないでしょうか。
いつでも、どこでも、誰でも、精度が高い墨出しを
−−トータルステーションに特化したきっかけはありますか?
体系立てて墨出しできた方が、仕事の習得スピードが早くなると思ったからです。
ぼく自身、実は30歳で職人になりまして、遅咲きだったんですね。職人になる前はサラリーマンをしていたのですが、知り合いの会社で心機一転しようと思い、まったく経験のない建設業界に飛び込みました。
当時は場当たり的に教えてもらっていたので、習得するのにかなり時間がかかったんです。建設業界って、「背中を見て覚える」ことが多いじゃないですか。正直、とてもむずかしい世界だと思いました。
仮に習得できたとしても、現場や人によってやり方がガラッと変わってしまうことはよくあります。誰がやっても、どこの現場でも同じように精度高くやりたいという思いがあり、トータルステーションを導入しました。
−−精度高く仕事をするために、意識していることはありますか?
感覚ではなく、作成したマニュアルに沿って作業をすることですね。
墨出しで一番大事なのは、「間違えないこと」だと考えているので、感覚的にやっていたものを言語化して、作業する人が変わっても間違えないようなマニュアルを作りました。
内容としては、すべて作業を終えてからではなく、都度細かく確認できるようにマニュアル化しました。最後にまとめてチェックしようとするとヌケモレが発生しやすくなるので。
−−御社の職人さんたちは、マニュアルを徹底的に実践しているのですね。
そうですね。ぼくも周知しているし、口うるさく伝えています。
マニュアルの実践以外にも、どういうときに間違いが起きやすいかを把握しているんです。例えば、ヒューマンエラーの勉強をみんなでやって、作業が複雑なものは図面を色分けして視覚的にわかるようにしました。
あとは準備が8割だと思って、入念に段取りをしてから現場に行っています。現場は屋外なので、暑かったり寒かったりするとミスが起きやすいんです。現場で考えなくても作業できるように、事務所で段取りを整理してから現場に向かうよう徹底しています。
準備を徹底すると、いざ現場に行ったときに作業内容を提案できるんです。監督も、ことあるごとに「ここもやっておいて」と指示するのは手間じゃないですか。ぼくたちから「ここも一緒にやった方がいいんじゃないですか?」と言えると、コストパフォーマンスも高くなります。
−−「準備が8割」は、元請さんとの信頼関係にもつながりますね。
そうですね、ありがたいことに「安心感がある」という声もいただいています。
実は最近、元請さんのコストを下げるための新しいサービスを始めたんです。「墨出しピットイン」といいます。
墨出し業者って、最初から最後まで現場にいるのが原則ですよね。でも実際は、必要な時だけ呼ばれることが多いんです。作業量は少ないのに1日ずっと現場にいるから、コストが増えてしまう。だから「半日しかいないけど、安くやります」といえるサービスを作りました。
運用はこれからですが。元請さんからの要望があれば柔軟に対応したいと思います。
地道な努力が信頼関係につながる
−−中村社長はいつ独立されたのですか?
2018年の9月ですね。独立する前は知り合いの会社にいたので、遅咲きとはいえ、もう15年この業界で働いています。
2018年に子どもができまして。40歳になってからの子どもなので可愛くてしょうがなくなり、子どもとの時間を増やしたいと思ったんです。子どもが生まれたからといって、あえて守りには入りませんでした。
自分で仕事をやってみたい意思もあり、思いきって独立しました。
−−独立にあたり、不安要素はありませんでしたか?
業界内でのつながりがなかったので、仕事がくるのかは不安でした。
墨出しって監督さんと仲がいいんですよ、どの業者さんも。新しく発注している姿をあまり見たことがなくて。
ただ、運よく紹介いただいた仕事もあり、新規の営業をしなかったほど、はじめから忙しくさせていただきました。
遅咲きで業界に入ったので、今までかなり勉強してきたのは今だからこそ感じる強みだと思います。トータルステーションについては、考えなくても操作できるように反復練習したり、墨出しに必須ではない測量士補や、施工管理技士2級の資格を取得したり。
熱心に勉強に取り組んだ甲斐あって、元請さんから信頼いただくための要素を増やしていけました。
−−最後に、元請会社様へのメッセージをお願いします。
ぼくたちはトータルステーションを使った墨出しのプロです。まだトータルステーションを使ったことがない人や、使いたいけどむずかしいと思っている人にとっては安心いただけると思います。ぜひご連絡いただけたら嬉しいです。
さいごに
墨出しのプロとして「間違えないこと」に徹底的にこだわる、株式会社中村測量の中村也寸志代表。株式会社中村測量にご興味がございましたら、下記ページからご連絡をよろしくお願いいたします。