顧客志向の提案力を強みに!関わる全ての人が幸せになる循環を

ETHICAL MANAGEMENT & DESIGNの今中代表に、お仕事で大切にされていることや会社の強みについてお伺いしました。
2023/10/25

父の働く姿から建築業界へ。起業に至るまで。

ーどのようなきっかけでこの業界に携わるようになったのですか?


私の父が工務店を営んでおり、主に店舗の設計施工を行なっていました。子どものころから倉庫にある端材で工作をしたり、父の図面を引く姿を見ていたので昔からものづくりには親しみがありました。母も手先が器用で身の回りのものは手作りのものが多かったです。

そうして育った影響もあり、大学ではプロダクトデザインを専攻しました。プロダクトデザインはコンセプト立案やターゲティングなどの企画力を主軸に造形に繋げ、それをどう的確に人にプレゼンするかというプロセスが重視される分野で、それは社会に出てからも活かされています。

大学卒業後は新築マンションの販売代理店子会社へ就職しました。インテリアオプション工事やマンションリノベーションなどを行う会社で、施工管理やインテリアコーディネート、そして一般顧客のお客様への営業経験を積みました。

プロダクトデザインを学んでいたのに無意識に建築業界に流れ着いたのには家系を感じます(笑)
祖父も大工ですし、祖先は木こりだと聞きましたから…

この時接客していた顧客は大手マンションデベロッパー様でもあり一般消費者様でもあったので、社会人としての素養や丁寧な接客姿勢を身につけることができました。

ーその後すぐに独立されたのですか?

いえ、その後26歳で建設資材総合商社に転職し、新規事業部に配属されました。会社のメイン商材とは異なる住設建材を新たに扱う部署だったのですが、住設建材はメーカーから既得商流が守られている文化があり、商流を変更するには明確な理由が必要で顧客獲得は簡単ではありませんでした。

その中で顧客開拓を進めていくにあたり「私自身や会社の強みをどう発揮するか?」「顧客の隠れたニーズは?」という糸口を探すため、丁寧にヒアリングとコミュニケーションを重ねました。そうするうちにお客様1社1社に課題が見えてくるようになりました。

提案力が弱く案件の取りこぼしがある企業には私がインテリアコーディネーターとして同行営業し、一緒に案件を取りに行ってアイデアを出し、工事が忙しく案件を断っているお客様には材工共で丸請けし、他社の営業は気が効かないとお困りの企業には先回りした提案や発注前の細かいチェックを徹底しました。

自社取り扱いの商品の案内だけではなく、お客様の役に立ちそうな最新の業界動向情報もマメに提供していました。それは、お客様の売上利益の伸長に貢献できれば、自ずと自分の成績もついてくるという考えがあったためです。

その他にも、利益率を上げまとまった売上を確保するために製造業などの地元企業様に元請として営業に行き、改修工事を受注したりもしました。自分が元請工事も経験することにより普段の営業でも顧客の立場に立った提案ができ相乗効果があったと思います。

このようにオーダーメイドの付加価値をつけたコミュニケーションを行うことで、お客様の方からメーカーへ商流変更のご指名をいただけるようなり、社内の営業賞やメーカーの販売賞を受賞することもできました。何よりお客様と「一緒に苦難を乗り越えて事業成長してきた絆」を数年がかりで作ることができたことが一番の財産でした。

こうして営業成績も上がりましたが、業界的に組織では「まだまだ女性にはチャンスが少ない環境である」と感じる場面があったり、組織の仕入ノルマにより自由な材料や工法を取り入れることができない窮屈さがあり、より自由に挑戦できる環境を自分で築きたいと思い起業に至りました。

柔軟性と提案力を強みに

ーETHICAL MANAGEMENT & DESIGN様の強みを教えてください。

私たちの強みは、柔軟性です。

私はデザインの素養はあるもののデザインアトリエや設計事務所での実務経験はなく、我流で他社事例から学び実践においてブラッシュアップしてきました。また、多くのお客様と一緒にお仕事をさせていただく中で、住宅や店舗、オフィス、公共案件、工場、収益物件など様々な種別の現場を経験しました。

そうして経験が積めたのは、多様な現場が最初から与えられていたわけではなく経験値が足りなくても、イレギュラーな状況でも積極的に最初の1歩を踏み出してきたからです。会社員時代、私はなぜか放任主義の上長が多く自分で方法や仕事の仕方を探すことが当たり前でした。

新卒からそうだったので会社に教えてもらえる、与えてもらえるという認識がなかったのですね。結果的に漫画ワンピースのルフィーのように社内外に強い仲間(ブレーン)を集めながら実践を通して必要な知識をつけていくようになりました。

そういう姿勢でいると、「難しい相談受けてるんだけど…」「これどうしても取りたい現場なんだけどハードルがあって…」「とりあえず一緒に面白い新規事業に挑戦しましょ!」というお声がけをいただくようになり、いつの間にかあちこちに私と仲間とお客様の輪ができるようになりました(笑)

そうして紡いだ繋がりや信頼関係は、現在の強みになっています。起業してからも顧問として企業の営業戦略コンサルティングをさせていただく機会や、優れた建築家をキャスティングして物件のディレクションをさせていただいたこともありました。

それも事業内容や経験に縛られずに「柔軟に、できる限りのお役立ちをする」「いい意味で面白がって前向きに取り組む」という態度を評価していただいたのだと思います。

一緒に働く仲間と共に

ーどのような従業員の方と働いていますか?


独立した時からずっと一緒に仕事をしてくれている職人さんがいるのですが、とても器用で経験豊富な方です。技術力が高く、担当した現場でそのまま次の仕事を受注してくることもよくあります。

また、人当たりも良い方なのでお施主様とも良い信頼関係を構築することができていますし、言われことをするだけではなく、「こうしたほうがお施主様は使い勝手がいいんじゃないのかな」と現場で気が付いたことはすぐ相談し工夫してくれます。

単調な現場はつまらないそうで、私が面白い現場を取ってくるから応援してくれているそうです。
このようにとても心強い仲間とチームを組んでおり、施工力でも強みがあります。

私がそうだからか職人さんもチャレンジ精神があり、より良い仕上がりを追求する気質の方が長いお付き合いをしてくださっている傾向にあります。現場で実際に手を動かし形にする仲間がいないとできない仕事なので、いつも感謝しています。


良い循環を生む環境作りを

ーお仕事をするうえでどのようなことを大切にしていますか?


この業界ではモノ作りの過程で多様な人が関わっています。
誰か一人で完成する現場は殆どありません。

材料を製造している人、それを販売する人、卸会社、多業種の職人、デザイナー、設計、営業や不動産会社、金融機関様、そしてお施主様。良いもの作りにはそれぞれにお互いに対する敬意が必要です。

しかし残念ながらその多層的な構造中で、誰かが損をすることで誰かが得をする、または誰かが損をすることで成り立っていることがブラックボックス化されている不都合な真実がおこることも多々あり、そのような仕事は純粋に気持ちよくないなと常々感じていました。

起業したからには、せめて自分がコントロールできる範囲では「関わる人全てが損することなく、気持ちよくより良い成果物を作ることに集中できる循環」を生み出していきたいと考えています。

それが長くて面倒な屋号ですが、ETHICAL MANAGEMENT & DESIGN
つまり「倫理的な経営とデザイン」に込めた思いです。


日々の積み重ねが未来を作る

ー将来の展望を教えてください。


将来的に自社の資本で独自性のある物件ブランドを世に生み出し、世界観を気に入った方に購入いただいたり、世に広く知っていただけることが目標です。私の尊敬するインテリアデザイナーに緒方慎一郎さんという方がいらっしゃいます。

彼はデザイナーでありながら、自身が事業主として和菓子店や和食レストラン、プロダクトブランドを経営しており、著書HIGASHIYA(出版:青玄社)では「自らオーナーにならなければ納得いくものをつくれない、という意味もあるし、事業に対する責任がとれない。」と書かれていました。

それに共感すると同時に、デザイナーとしての着実な経歴と実績、実力を持ちハイエンドな案件が主軸の緒方さんですらそう思うのだから、叩き上げのような経歴の私は尚更だと思いました。

今は、その目標を実現するためにひとつひとつの現場で丁寧な仕事をし、実績を積み重ねていく時期だと考えていますので、今後も関わる皆様と一緒により価値の高いものづくりを追求していきたいです。

映画のエンドロールのように物件のクレジットに全員の名前を入れられるくらい、案件に関わる者全てがプロとしての誇りと責任感を持って取り組むことが理想です。 

ー休日はどのように過ごされていますか?


家で猫とのんびり過ごすことが多いです。

なぜか動物好きな仕事仲間が多いので、「いつか猫飼い専用のマンション作りたいですね。」などとペットの話をしています。私自身も電気工事屋さんから譲っていたいただいた保護猫がいるので、そのうち自分の愛猫を看板猫としてデビューさせたいと密かにもくろんでいます。

あとは休日に関わらずドライブも好きですね。景色を眺めながら車で走っていると頭がすっきりして、どんなことがあっても明日もちゃんと人生と向き合っていこう!という気持ちになります。